在宅療養支援室
在宅医療あるいは療養と称して、原則的にはあらゆる疾病が対象となるのですが、老弱、各種癌、各種難病、脳血管疾患、心疾患、各種整形外科疾患等々が主になります。依頼を受ければ、断ることなく、開設以来取り組んでおります。ちなみに、在宅にて看取ってきた患者さんは、開設以来6年の間で、35名ほどになります。現在、在宅にて関わっている患者さん総数は、約50人ほどになります。
過去十数年間関わってきた夫婦共に90歳を過ぎた老々家庭の例です。ご主人については、例に漏れず、当初は、膝腰痛から始まり、高血圧、前立腺肥大に伴う尿閉、等を既往とし、最近では、膀胱癌による尿閉で留置カテーテル増設、慢性心不全を抱えた状態です。奥さんは、当初より、肥大型心筋症があり、以後、高血圧、脊柱管狭窄症による両下肢の知覚異常及び歩行障害を同時に抱えた状態です。在宅療養導入は、5年ほど前からになります。当初は包括ケア体制下(訪問医療・看護、訪問リハ・口腔ケア、訪問薬局、介護器具貸与、小規模多機能施設利用での介護サービス利用)に順調に経過していましたが、最近半年間、ご主人が転倒しやすくなり、肺炎に成ったりで、在宅にて加療し、本人希望有れば、垂水中央病院入院下に加療したりを繰り返してきております。言うに及ばず、転倒・入退院を繰り返すほどに、急性の疾病を繰り返すほどに、在宅でのADL・IADL共に低下してきております。近隣の方々もいろいろとお世話されているようです。当然のことながら、包括ケアチームもそれぞれに、24時間対応の中で、本人の希望でもある在宅での療養を支援すべく、カンファレンスを開くなど意思統一を図りながら、それぞれの支援を提示し対応してきております。最近の最も大きな課題は、死に場所の問題です。垂水を離れ暮らす子供三人は、施設入所を進めているようですが、ご夫婦共に最後まで自分の家で生活していきたいとの希望が強いのです。子供の世話になりたくないの一心で、今までやってこられています。しかしここに来て、夫婦お互いに限界が近づいてきている事を感じていらっしゃるようです。もちろん、家で最期を望まれるのであれば、医療・介護共にその体制にはあります。高齢での”生活の継続”の難しさを感じるところです。また、一方では、”地域での忘れられた死の文化”を痛切に感じる時でもあります。
年齢は39歳女性卵巣癌の方です。子供が2人。医療センターより紹介を受けたのは、亡くなる30日前でした。治療(抗がん剤投与)、緊急対応は紹介元の医療機関でおこなうとのことで、在宅療養時の”何かあればの対応”だけお願いしたい、また、麻薬使用での対疼痛対策での各種注射による投薬、腹水対応カテーテル・バルーンの処置などもできればお願いしたいとの由。紹介を受け早速に訪問いたしました。訪問して驚きました。診察するまでもなく、余命はさほど長くはない(早くて一週間遅くて三週間ほど)と思われました。しかし、家族はその認識がない様子で、あらためて、本人に(癌の告知は受けている)自分はどれくらい生きられるかと聞いてみました。あと3年くらいかとの返事。お母さんに聞くと、まだまだ元気に生きられると。子供は普段どうり学校に行き不在。余りに、残った時間の大切さを感じない環境に、看護師共々に意気消沈して、一回目の訪問が終わりました。以後、淡々と指示されてきたことをやっていきましたが、最後は突然に訪れた死に、家族の方は動揺の極みだったようで、後に在宅が悪かったのではと話しに来られました。在宅療養でのホスピスについて、あらためて考えさせられました。医療の視野の狭さ、人そのものの不在。信頼の連携がとれていない在宅医療の反省でした。そのほか4人ほどの在宅癌死の方がいらっしゃいました。全員の方々が、同様な環境の中での最期でした。最後くらい、家族の時間を大切にするためにも、旧来の医療モデルに捕らわれない在宅医療の必要性を感じた方々でした。
①人間中心の医療・ケア
②包括的総合アプローチ
③連携重視のマネッジメント
④地域指向アプローチ
⑤公益に資する業務規範
⑥診療の場の多様性
いわゆるプライマリーケアの内容になります。総合診療専門医の到達目標とも言われる業務です。